もう持ちづらくなり、さらに鉛筆削りでは削るのも難しいほど短くなるまで、大切に使われた鉛筆。そんなふうに、最後まで大切にされた鉛筆は、もう使えないからとは言え、捨てられない愛おしい存在です。
僕は、そんな小さな鉛筆を集めています。それを知っているこどもたちが、鉛筆が小さくなると「あげる」と言って持ってきてくれることもあります。それを聞きつけた大人も「家にずっとあったから」と、くれることがあります。
そして中から芯だけを折らないように取り出すのですが、これが結構難しいものです。1ヶ月以上水につけておくなど、スレットという芯を挟む2枚の板をくっつける接着剤を溶かすのです。
そして、ピーマンやナス、トウガラシなど、主にナス科の野菜の枝の乾燥したものを利用して「畑の木ペン」をつくります。また、モロヘイヤやオクラといったアオイ科の野菜も乾燥すると硬くなり利用できたり、まだまだ探究の余地があります。
枝一つ一つに個性があり、どれを鉛筆にしようかと考えるのも楽しいものです。
これはこどもたちと野菜鉛筆を作ったときの様子です。
そして先端を削っていきます。枝の太さはそれぞれに違うので、一般的な太さ7mm用の規格でできている「鉛筆削り機」にはたいてい入りません。
小刀やナイフで削る必要があります。そんな体験も、こどもたちにとっては楽しく、そして根気のいる、大切な体験でもあります。
表面のデコボコやササクレは、ナイフやサンドペーパーで磨き、オイルで仕上げて完成です。
世界に一つの「畑の木ペン」が並びます。
最後に削りかすの話です。
野菜鉛筆はもちろんのこと、一般的なシダー製の鉛筆も、軸に使われている材料は基本的には自然由来の素材で作られています。
その削りかすをゴミ箱に捨てるのは、なんだか違和感を感じます。
なので、畑の木ペンづくりで出る削りかすは大切に貯めています。
そして、すべて畑にお返しするようにしています。
こどもたちにも、日々の鉛筆削りかすも、土にお返しすることをおすすめしています。畑の土に直接入れるのもいいですが、堆肥づくり(コンポスト)に入れると、他の生ゴミから出る余分な水分を吸ってくれるので、腐敗しにくくなる優れものです。
畑ではいろいろな小さな生き物たちや微生物(キンちゃん)たちの力で、すべて分解され、そして土にかえります。
そこから再び新たな命が芽生えます。
そして野菜を再びいただき、最後に残った枝が鉛筆になる。
まあるい自然の循環に参加するって、とても気持ちが良いのです。